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執筆者の写真YY

当店の血統(系統)群の特別性

当店のホペイの特別性を私は複数列挙できます。その中で比重の大きなものを二つ上げてみます。


①作り込みに倍の時間をかけている

➁最高傑作個体を親にしないことがある

③立ち会って目で見て能力を確かめている


血統構築の過程と、種親選別法に、当家の血の特別性の根拠が一部あると、私は考えています。



造り込みに時間をかける

目指したい形や数値のレベルを定めた時に、1手目からそういった数値や形状を狙いません。およそ4~6年のスパンで計画を立てます。そこから試行を繰り返して、3代後くらいで目指したことの具現化を図るよう考えています。


分かりやすい例として顎の太い個体を狙う場合について説明します。私は、すぐに理想の数値(特にスペックアップ)を出すような交配をしません。理想の数値を獲れるまでに、2代か3代かけるつもりで計画を立てて、親とする雌雄も決めていきます。具体例を、直近で、特に注目が集まった個体達を添えて紹介していきます。


こちらはGX50-yyiiの初代の個体です。

2020年に誕生しました。


初代GX50-yyii 顎幅8.1mm CBF1 採集計測体重26g幼虫~

余談ですが、顎幅6mm台が登場してから、顎幅7mm台が周知されるレベルで登場するまでに10年ほどの歳月がかかっています。2015年頃には、顎幅7㎜を見たことがあるというブリーダーは増えましたが、完品の現物を見たことがあるというブリーダーは非常に少なく、顎幅7mm台の個体が一般レベルの販売に回ることはなかったですし、顎幅7mm台を持っているというと訝しがられたものでした。そういった渦中で、不全でも出たことがあるらしい・・・という真実味が無いレベルで顎幅8㎜というものの気配が微かにあった程度でした。


2018年、当家は2頭の顎7㎜台をヤフオクに出品しましたが、これは「顎幅7㎜の個体が噂ではなく、確かに存在する」ということを知ってほしいということと、それをきっかけにホペイの流行に火が付くと良いと考えた背景がありました。


2018年に顎幅7㎜というと、それはそれは大層なものでした。しかし2020年頃から顎幅7㎜台が普通に販売の場に姿を現すようになってきています。仕上がりに若干難があっても、きちんと測って7㎜を抑える個体は十分実現可能な存在に変わっていきました。


2022年頃には、種親の用意に妥協せず、その個体や血統に合った飼育をすれば誰でも7㎜を実現させられるような時代になりました。振り返ってみると、顎幅7㎜台の存在が知られるようになってから、顎幅7㎜台が誰にでも実現の可能性があるものになるまで5年以上はかかっているように感じられます。


さて、先の画像に話を戻して、先の個体は2020年に羽化したものです。羽化時の顎幅は8.5㎜ほどありましたが、片羽を収納することができずカット、死なせないために乾燥処置を行ったため、顎幅が縮んで、最終的には基部最短幅8.1㎜を抑えました。何度も計測画像や動画を公開しました。顎幅8mm完品が初めて公になった瞬間であったと考えています。


まず、それほど顎幅8㎜の完品という存在は、2020年には大層なことでした。また、この個体の台頭をきっかけに、多くの「次は9㎜を!!」という期待の声も頂きました。応援、大変嬉しく頂きました。が、私としては次の顎幅は9㎜ではないと考えておりました。不可能かどうかは生き物相手のことですから断言はできませんが、


①実現の現実味が低いと感じた

➁それを行うと血が潰れてしまう懸念を感じた


この2つの理由から、「次世代も維持を狙います」「狙っても8.3㎜くらいです」こんなことを申し上げたと記憶しています。顎幅6㎜が確認されてから7㎜台の実現まで、7㎜台が確認されてから8㎜台の完品羽化まで、どのステージでも長い時間がかかりました。10進法に則って次世代で9㎜という理論は無茶に近いと考えたのが一つ・・・・そしてなにより、不安定な太さのものを加速的に太くすることで虫の形状と「材質」のバランスが崩れることを懸念しました。


血の崩壊という表現は抽象的です。いくつもの要素を含みます。そのうちの一つを、私は虫の形状と材質のバランスが取れていない状態になることと言語化しています。一つを、と申し上げたのは、後述しますが他にも・・・虫の形状と虫の能力(筋力やポンプの圧力)のバランスが取れていないと、これもまた次世代で困ったことになったりします。虫の虚弱性(病弱・食が細い・黒化する)なども良くない発現ですね。


上記のようなことのバランスが取れていることはとても大切です。太くなってきた血統の幼虫を急速に太らせると、成虫になった時に腹が余ったりします。顎に体液が流れ込み切らない現象が見られます。顎が太くなると蛹の顎が重くなります。蛹の皮の質が変化すると順応できることがあります。羽化力が高い極太物の蛹の皮は分厚いです。頭でっかち顎でっかちになると膨張力が後れをとることがあります。膨張力が伴ってくると、自力完品羽化の期待値があがります。太いもの×太いもので階段を上がるように太くしていくのは難しいです。


太くして、安定させて、スペックアップさせて、また安定させる・・・この繰り返しを行うことが大切であると当家は考えています。安定のプロセスを飛ばして飼育しても良い虫は得られることがあります。しかし、それ以外の虫が仕上がらなかったり★になったりします。そういう生育過程でストレスを飼育者が感じるような血を私は優良血統であると言いたくはありません。極力ストレスフリーな血を作っていきたいと考えてきました。また、きちんと安定化を図らないと自然離れした形状に変化させていくことが難しいです。どこかで頭打ちをしてしまいます。限界がきます。自然離れさせるためには、自然離れした形と性質(能力)が備わっている必要があり、性質や能力の方が遅れて付いてくる・・・だから、安定期間という能力を養う期間を設ける必要があると私は考えています。

能力不足は、変態の過程や、蛹や成虫の形から読み解きます。先のyyii8.1の蛹だった頃の画像です。帰宅したら、最後の中級サイズの前蛹が自力でこうなっていました。驚愕の個体でした。蛹の仕上がりも最高です。ただし、顎先が少し開いていました。


このまま急速に太くしてしまうと、顎先は開いていくと予測しました。その予測は、yyiiの立ち上げまでに経由したTRS50、TRS48A、GX50-STWの蛹化の傾向から立てました。更に太くするためには、この顎先が閉じることが大切だと考えました。それは、蛹の段階では読めず、この個体が羽化をしてから認識したことでした。


この個体は羽化をしたときに、胸部から若干の出血をしました。顎が分厚く太すぎるため胸部を圧迫したのでしょう。この個体に限らず、7.5mm超級から、胸部付近の問題が多発することを確認していましたので、この蛹を振り返ると、私が次に狙うべきことは9mmではなく8mmクラスやそういった顎幅率の個体の安定化であり・・・・その安定化を言語化すると蛹時の巨大な顎が蛹の胸部を圧迫しないことでした。


どう実現するのかについては色々な方法が浮かびましたが、このGX50-yyii8.1については、顎先をよりビタ閉じにして、顎を垂れさせないこと・・・と仮定しました。顎8を狙わずして出てしまった8.1mmの次世代は、顎幅特化次世代に舵取りの方向を変えるが・・・・「より上をより上を」というブリードではなく、まず安定化させることで確実なスペックアップを中期的に狙うことを計画しました。そのために次世代については8.5mmや9mmを狙うのではなく、血統として虫が適切な変態をしたときにダメにならない性能を保持する、守りのブリードをすることにしたということです。


100頭育てて1頭が納得のレベルにある!というブリードなら、より上の数値を狙っていたのだと思いますが、先にも申し上げた通り手に取って育てて楽しい快適な系統でないと、”血統”を名乗りたくありません(それが理由で何年も顎幅について後れを取ってきたというのもあります)。このような、前進だけではなく、維持をするというステージを設けながら物質の状態変化のグラフ的に血統を成長させるという手法を当方は一つ、主たる手法として大切にしています。


GX50-yyii8.1の次世代F2(2022年)

先の個体の次世代では、狙った通りの顎先がより閉じた形状の蛹が出てきました。

次世代の一部をご紹介します。ここからご紹介する個体は全て別個体です。


GX50-yyii8.1 F2 A個体



GX50-yyii8.1 F2 B個体

このような形状の個体が合計で5頭ほど得られました。どれも顎先が、初代よりも閉じておりました。そして、これらの中で最も太い顎基部幅数値を出した個体は以下の個体です。


GX50-yyii8.1⑦ F2 2022年


同個体別画像

大きくて、顎の太い個体です。顎が下になるように撮影をしているのは、初代と比較をしやすいようにするためで、初代と同じ角度で同じように写るようにしました。2代目については多くの画像を撮影しましたが、初代については内翅の切除等もあったため交配まで極力触らないように管理し(顎基部幅の2020年レコード個体と言っても過言ではない個体であるため)、ほぼ写真が残っておりません。


この2代目は、初代のように内翅の切除を行っておりません。交配を終えると同時に★になった初代よりも長生きをしてくれると考えています。さて、この個体の顎基部幅は8.33です。初代が8.1mmでしたから親越えをしたと結果的には言えるのかもしれませんが、初代は乾燥処置をして8.1mmに顎基部幅数値が下がった背景がありますので、効果に伴う数値減少を予測して、もし初代に乾燥処置を施していなかったら丁度同じくらいの基部数値になったと思われます。初代8.1mm個体は26g幼虫からの個体でした。この個体は32g幼虫からの個体でした。こちらの個体の方が体長があります。そう考えると、2代目yyii8.1⑦のこの個体は、基部数値については親越えであるが、総合評価としては数値微減である、ただし初代より安定化した・・・と言えるのではないでしょうか。


ですから、とてつもなく太い顎の個体を得たことに変わりはありませんが、私としては2代目yyii8.1については数値が微減し性能がアップしたという見解です。そして、それが私が狙った結果であり、その結果に至るまでの過程においても顎先が初代よりも閉じるという狙い通りの結果になったので、狙いとは違うとんでもない太さの顎を出してしまった初代よりもこちらの方が評価は高いです。


このように、yyii8.1はF2で更なる顎幅アップを狙っておりません。顎幅数値を獲りやすい系統であることを一つの特徴としている8.1系ですが(ホペイの基本を崩さずカッコいいのは大前提であるとして)、それでも一度スペックアップが図れたら次の世代では安定化を図ります。スペックアップが難しい場合は、まず安定させるようにします。マックス数値を出せた個体よりも、系統全体を見て伸びしろがあるか、安定感があるかを当方は最重要視しています。そうでないと、その後のスペックアップも、形状追及も難しいからです。


形状追及が中心となるホペイブリードの世界では、理想の形を言葉通り狙って行くことになります。時には、太かったり大きかったり分厚かったり顎が曲がっていたりと天然個体には中々見られないような形状変形を視野に入れることも珍しくありません。むしろ、そういった狙いを持つブリーダーが大半であると言っても過言ではありません。


私はこの形状追及において、ワイルド離れさせようとすればするほど、「安定化をさせるステージ」が重要であると考えています。皆が狙って皆が出せなかった顎幅6㎜は、一度通過されると顎幅6㎜台の個体が普及するステージへ進みました。6㎜後半が顎幅の最高クラスと考えられていた時代は、顎幅7㎜台の個体の台頭とともに次のステージへ移行を始めますが、顎幅7㎜が確認されてから顎幅7㎜が誰にでも望めるものになるまでには数年を要しました。数年かかりましたが、7㎜台の顎幅は奇跡ではなくなりました。奇跡の個体とされた顎幅7㎜個体が奇跡ではなくなるまでの間に、安定化が起こったのだと私は考えています。今はまだ顎幅8㎜台は奇跡の個体と言っても過言ではないでしょう(2023年1月段階)。ですが、「あり得ない」と言われていた2020年とは異なり、見たことがある・不全であれば出したことがあるというステージに入ってきました。まだ、顎幅8㎜が公の場で販売に回ることは極めて稀ですが、いずれ顎幅7㎜がそうであったように、顎幅8㎜も奇跡ではない時代がくるのかもしれません。


どうしても、分かりやすいところで数値を添えて説明をしやすい顎幅を例にとり説明をしましたが、形状についても同様のことが言えると考えています。内歯が外歯の向こう側に飛ぶような個体は2015年頃は希少でしたが、今はかなりの数を例年見ることができるようになりました。内歯と外歯の重なりが非常に良い個体は、ホペイ入荷の2000年頃は究極のレアリティを纏った個体でしたが、今では普通に目撃できるレベルになっています。顎先が垂直に近しいほど曲がった個体などについても同様でしょう。頭幅などのようにそうでもない部位の形や数値もあることはあるのですが、「出すのが難しい」形状や数値については、まず奇跡の1頭目があり、次にそのレベルの安定化があり、そして現実性を帯びながら普及していく、こういった成長を「ホペイの形」は太さや大きさも含め、進めてしてくものだと私は考

えています。


じっくりと時間をかけて作り込んでいった例、作り込めなかった例をご紹介します。まず1頭目、こちらの個体は、2015年に羽化をしたK+350のオスです。K+350はその後特徴的な切れ味抜群のストレート系統になっていきますが、もしこの個体が仕上がっていたらK+350の行く末は変わったかもしれません。


K+350 2015年

この個体は、羽化直後に★になってしまいました。当時の私が求めた一つの理想形状でした。とても残念に思うと同時に、必ず将来、同レベルの同様の個体を誕生させようと誓ったものでした。


X13G

2020年、形はそのままに、スペックアップをした個体が誕生しました。この個体の実現までに、実に5年もの歳月が必要でした。


X13Gは面白い系統でした。引き続き、X13Gを例にとり説明を進めていきます。次の個体も2020年のX13G、上の個体の兄弟です。


X13G 2020年 80mm、頭幅30.3mm

この個体は羽化に立ち会うことができましたが、どうやっても仕上げることができませんでした。2020年の段階では、当家の幼虫最大体重記録を更新する37gの幼虫からの個体でした。


こういった個体の因子をGXは持っていました。2015年の初代GXにおいても、同様の超巨頭個体が誕生し、同様の不安定さにより子を残さず★になりました。


2015年GX50 頭30オーバー


このような不安定なステージをよく観察すると、不安定さがどこにあるかが見えてきます。どういった不安定さがあるのかも見えてきます。こういう個体が生き延びても、更なるスペックアップや強制変形を目指さず、1代は我慢をして、目指したい形状を維持したまま安定化を図ることが大切です。


このようなGXの持つ以上巨頭を無事に羽化させるべくまず白羽の矢を立てたのは以下の個体の末裔でした。



GX50-K 2015年 頭幅29.4mm

この末裔に別血統を交配させることにより、腹部の安定化を図ることを目指した結果が以下の個体です。


KX303 80mm、30.3mm、完品

このように、常に前進をするのではなく、”安定期”を設けることにより、次のステップに入った時にどうしようもない不全にならないこと、変態がスムーズなこと、妙な排水や体液流出、黒化などの弊害を出さないことを当家は血統創りにおいて一番大切にしています。





マックススペックや最高傑作を親にするとは限らない

次に、種親の選別についてです。その系統の中で最も派手な個体、最も太い個体、目指した形に最も近い個体を使わないことが多多あります。


2020年 GX50-DG-V1 使用せず


2021年 GX50-X 使用せず


2021年GX50-X 使用せず


2017年 GX48A-KW 使用せず


2018年 GX48A-KC 使用せず


2020年 M44S 使用せず


2020年 M44S 使用せず


2020年 M44S 使用せず(75.5-30.1)


2018年 GX50-X 使用せず


2017年 GX50-G 使用せず


2017年 K+350 使用せず



2019年TRS-9 使用


2022年GX50-X 使用


2015年羽化初代GX50 後のGX50系は全て子の親からの末裔


2019年羽化 GX50-K2 KX8.3の親


このように過去の種親を振り返ってみると、それらがそのラインの最高スペック個体でなかったり、最も目立った個体ではなかったりすることが多多あります。メスも含めるとこの傾向は尚強いです。使用しなかったオスは他にもいましたが、特に「なぜ使用しなかったのですか」と聞かれることが多かった個体を列挙してみました。


私は伸びしろを大切にしています。人気があるのは、少し無理をした個体や、若干不自然になった個体です。そういう個体を使わないわけではありません。使うこともあります。言い換えれば「個性」でもある「無理をしている様や不自然さ」を次世代にも踏襲させたく使うことがありますが、使わないこともあります。使う場合は必ずリスクを予見したうえで使うようにしています。


大雑把に傾向をまとめてしまうと、無理をしているような不自然な個体は、次世代でもそういった個性をしっかりと発現させることが多いです。こういった種親・次世代を採るという観点からも、従って若干バランスを崩した個体が人気なのは頷けます。10オスくらい得られれば、1頭は会心の個体が出ることが多いです。無理をした個体は高額になることが多いですが、それ相応の次世代をきちんともたらしてくれることが多いです。


私は長くに渡って、そういった「トップ3くらいが仕上がればよい」というブリードを敬遠してきました。なるべくやらないようにしてきています。理由は主に3つあります。


一つは、そういった異質個体の上を行く超異質個体が親越えをして出てきたときに仕上がらない可能性が高まることです。もう一つは、先に申し上げた安定化が図りづらいと感じるからです。例えば次世代の不全率がさほど高くなかったとしても・・・より自然離れした形状に持っていくのは難しそうだという血の頭打ちに直面することが多いからです。そして最後に、血統を名乗ることに抵抗が生じるからです。私は最上位の実績は大切だと思いますが、最上位個体を手放さないことが多いのがブリードの世界ですから、最上位未満の個体がきちんと血統を体現できるかを大切にしています。太い方向性を狙った血統なら太い個体が、逆三角形の方向性を狙ったラインなら頭でっかちの個体が、美形狙いなら美しい個体が、中堅クラスから生まれてくる・・・・そういった可能性がきちんと備わっていないと血統とは呼びづらいと考えております。そして、そういう可能性=期待感が、血統の価値観であると考えています。2015年、2016年は余品の全てをブログでのプレ企画として放出しました。放出した先では、良い結果が出たところもあれば、さほどでもないところもありました。後者にならないように、血の造り込みを強化しました。その結果、現在はここまでに説明した3点を大切にしており、その結果”作品としての存在感”が最高の個体であっても、少し無理をしているようであれば譲渡に回すようにしています。当家以上の個体が、他ブリーダー様のところで生まれてくれればという想いも強いです。


直近の2023年ブリードについては、以下のGX50-yyii8.1⑦の、8.1系の最高顎幅絶対数値を持つ個体はメイン種親ではありません。

種には使いますが、サブラインを持っておくために頑張ってもらうという使い方であり、メインのオスは別の個体を使います。この個体は顎幅が8.3ありますが、メインにするオス親の顎幅は7mm台前半です。この個体は8.1系のF2ですから、初代と比較すると仕上がりが良くなっています。少し余裕な顔が見えてきました。顎8クラスは舌の動きに支障が出ることがありますが、この系統でそういった弊害は見られていません。胸部からの出血などが見られることがありますが、それも無くなりました。先代より安定したので、あと一歩頑張って安定化を図ろうと思います。本当に最上位スペック個体をメイン種オスとして使うのは、yyii8.1については最速で2025年だと考えています。


このように、言語化をしてみれば、2015年頃から私の種親にゆとりを求める傾向ははっきりしてきており、2017年には確信に変わっていると言えますが・・・それでも先にその代の最も異端な個体を使うことにおけるリスクを列挙できたように、リスクを分かったうえで結構使っているという事実も認めなければなりません。めちゃくちゃ太いオスに、とんでもなく太いメスをあてると、次世代が中々難しいことがある・・・と分かっていても、ゴツゴツの厳つい♀は使ってしまう使いたくなる恐るべき魅力を持っていますよね。博打的なブリードになりますが、当たった時がデカいのも鬼♀と呼ばれるゴツゴツの♀の魅力だと思います。このガチャ感に、交配の際は高揚感を覚えるものです。あと一歩頑張って、と書きましたが、何を頑張るかというと、上の8.3顎オスをメインに置かないことを精神的に頑張らなければならないということです。顎8完全完品は2023年1月現在においては、未だ顎基部幅数値レコードと言えるレベルの個体です。これを使わないというのは、精神的に非常に難しいことです。可能なら、10♀にはかけたい。もしかしたら上手くいくかもしれない。そして、これまでにマイナスを取らないという考え方での血の構築を進めてきているので、おそらくそこそこは上手くいくし、顎8完品も拝めるのだと思います。それをやらない。そういう選別は、中々難しいし、最高レベルの親を使うのが当たり前であった累代飼育の概念から少し外れた手法でもあると考えています。そういったことを中心に10年ほど練り込んできている我が家の系統群は、数値や形状で後れを取ることもあるとは思いますが、育てていて安心と感じられるものになってきています。アウト交配でも、とても使い勝手が良くなっています。いつもカツカツのがけっぷちにいるのではなくて、いつも少し余裕を持っている、だから譲渡先でカツカツの上限を狙うような無理をさせられても多少は問題ない・・・・そういう血づくりをしています。



立ち会って性能を見極めている

最上位クラスを仕上げればよいのであれば、重量級の前蛹を拠って、それらに立ち会うのが最良です。しかし、私は立ち会える限り軽量級の前蛹等にも全て立ち会うようにしています(その結果3年連続で倒れましたので、現在健康を崩さない方法を思案中です)。立ち会う理由は、GXの立ち上げを決断した2010年前後の頃に遡りますが、今回は成果が出始めた2015年、初代GX50,GX48、K+350誕生の頃の説明をします。


2015年に立ち上げたGX50は、2代目2017年頃には既に「アウト交配でスペックアップし、不全率が軽減する」と言われるようになっていました。2015年までに私が考察していたのは2点でした。

①膨張時の顎の膨らむ方向

➁羽化時の筋力

2023年1月の今から振り返ると詰めが甘いし物足りない考察ですが、理由の詰めが甘いのとバリエーションが足りないだけで外れてはいなかったようです。蛹化時に顎がなるべく上の方を向いて膨張し、中々下に重力で垂れてこなかった個体を親にしたことで、2015年初代GX50の親から、現在のyyiiに繋がる親、GX50-Xが誕生しています。GX50-Xは2018年に顎7台完品を連発しましたが、蛹化時に羽が巻いてしまう現象が起きにくかった理由は先述の膨張の強さにあったと一つ、分析をしています。


羽化の際に反転が上手であることを狙いとして、羽化の際に力が強い個体を選別するようにと言語化していました。正直これは血統の能力に直結しているとは今は思いませんし、表現として正しかったかというと若干疑問です。2023年1月現在の見解としては、

「回転が上手くいきやすい蛹形状である」→内部形成が円滑に進む

「足などの各部が太く丈夫である」→末端が太いと数値を乗せやすい(懐が深い)

というのがより正確なところではないかと考えています。


顎が上方に膨張し、羽を圧迫しにくい変態をする個体を選別している様子

頭部が胸部を圧迫しにくく、アンテナのずり落ちも起きにくい。



極太個体で同じような膨張をしている様子

膨張後も羽を圧迫しにくく、顎が垂れにくい。


後から顎が垂れる分には支障がないことが多い


掘る掘らない、触る触らない論ではありません。

見る見ない論であると、ここでは考えています。


変態補助を行い、上限を早く解放する品種改良手法については、別途記事を立てたいと考えていますので、それについてはここでは触れません。


今回は蛹化の様子を例にとりましたが、変態というクワガタの神秘的瞬間を見ることからは、無数の情報を得ることができます。成虫を見て分かること、幼虫を見て分かることがあり、見て分かる有形の情報から次世代選別をすることは現在の主流かと思います。それと変わりません。


変態の様子を観察することもまた、虫を観察することです。変態が円滑でスムーズな個体は優秀です。大きな個体なりに、太い個体なりに、顎が長い個体なりに、顎が曲がった個体なりに・・・変態の上手さというものが微妙に違っていたりもします。狙う形状に対してより適切な蛹化・羽化を行える個体を選別することは、毎年よく成虫を観察して種親選別をすることとほぼ同じ取り組みであると考えています。


今後も、より多くの情報を得ることで、それらを反映した血統構築に臨みます。この記事をご覧になられて、自分だけの気づきやあと1つの観察を次世代に活かせるかもしれない、そんなことを思っていただければ幸いです。


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