ホペイ飼育における「血統」という言語について私は度々言及してきている。これまで、血統という言語を用いることを敬遠する傾向があったことについても何度も説明してきているので、ブログなどを辿って頂いている方には聞き飽きた表現かもしれない。それでも、今一度この「血統」という言葉について言及することに付き合っていただきたい。
私は「系統」という言葉を使ってきており、一定の発現傾向の固定化が確認できた段階で一部の系統を「血統」と呼ぶようにしている。重要なのは「発現傾向に対する期待値の高さ」であると考えている。従って、累代指数が何代まで行ったら血統と呼ぶ、というような線引きはしていない。F2レベルから固定化が確認できればそう呼ぶこともあるし、F3以降でもテイストのバラつきや優良個体の発現率の低さが表に出るようであれば系統と呼び続けることもあるのである。
さて、2022年頃から当家の系統たちにF3に進むものが増えてきた。F2、F3に進める決意をする・・・・これは私にとって非常に高いハードルであった。どうせスタートするなら、思い切り納得できるスタートラインから始めたいものである。だから、超優良個体が誕生しても、どうしても「もう少し良くなるんじゃないか、まだスタートラインを引くのは早いのではないか」と思ってしまって微調整をかけてしまうのである。そして、困ったことに2020年~2021年付近までは、そのような取り組みをした結果、確かに・・・・・個体は年々少しずつ、より私の好みに近しく変化してきたのである。その結果、中々「固定化」という同腹兄弟姉妹を親としたインラインブリードに踏みこめずにいた。
先に紹介した私のバイブルである2001年21月発行のBeKuwa1号には、以下のような内容の記載がある。これは引用ではなく、私なりに少しまとめてしまっているので、やはり正確なホペイの飼育歴史背景を辿りたい方には、他の出版誌も含めバックナンバーは集めて頂きたいところである。
血統という定義は決まっておらず、この言葉の解釈は人によって異なることもある。しかし、少なくとも親の発現傾向が子に高確率で伝わり、それが維持されるということを血統と呼んでいるように見受けられる。重要なのは「高確率である」ということであり、率が低いようであれば血統とみなされることは難しそうである。そして、優良個体の発現率を高くする作業が血統の確立の作業であるとするのが普通である。
私は、今から22年も前のこの文言に、極めて忠実に取り組んできた。よって、ある程度の固定率が確認できるまでは”血統”と呼ぶことを敬遠し、「系統」と呼ぶことを好む。また、優良個体発現率を高めるための一般的な方法が、同腹兄弟姉妹同士のインラインブリードや、同腹兄弟姉妹の軸の上で成立する戻し交配などであると考えている。抽象的な表現にはなるが、血を濃くすると呼ばれるような飼育が、いわゆる固定率を高める作業であり血統の確立作業であると、過去の開拓者達の取り組みを見て振り返っている。
もちろん、20年の歳月を経ているため、この血統観の捉えられ方や表現のされ方、そしてニュアンスはある程度変わってきているだろう。
例えば、同じような個体の発現の連続性が強く求められていた昔に対して、最近はその傾向がなくなったとは言わないが、近年では「優良個体・ハイレベル個体の高い発現率」が求められるようになってきていると言った方が正確かもしれない。ハイレベル個体とは抽象的な表現であるが、どのような血統もある程度ブラッシュアップが進んでいる今日この頃、ややアソビを残した表現の方が適切であると私は考えているのである。いずれにせよ、親と同じ個体が出てくることは喜ばしいが、親越えを強く願うのは今のブリーダーのもう一つの楽しみかたであろう。
観点が変わるが、
優良個体の発現率を高めることだけに注力すると・・・・存続性が危ぶまれるということを・・・・この20年の間で目にしてきた・体験したブリーダーも少なくないであろう。その結果、優良形状の発現率だけではなく、不全率の低さや、食性の汎用性なども血統の性質として大切にされてきているといえる。
「流石優良血統、幼虫が大きくなる!」などの表現も珍しくないことから、同じような個体が連続で出現してくるだけではなく、大きくしやすかったり、不全が少なかったり、良く産んだりということも血統としては尊重されてきていることであろう。
さて、そういう色々を「血統」を語る上では避けて通れないほどには飼育が開拓されてきているのであるが、私としては「血統化」に常々ハードルを感じてきたというのが背景である。中々、「インラインで煮詰めよう」と思えなかったのであった。スタートラインをもっともっともっともっと・・・上に高めたくなるのである。
好みに対して80点の個体が誕生すると、それをインラインで煮詰めて100点にするより、そういうことができるのであればスタートラインを100点にして120点の個体を狙いたくなってしまう。こういう楽しさもホペイの飼育にはあるのである。必ずしも血を煮詰めるだけが血統構築ではないのである。スタートラインを模索する・・・それ自体が、実はすでに・・・・個体群のレベルを高めるという血統構築の作業の一部であると言えるからである。
最近のホペイブリーダー達は、そういう楽しさを自在に楽しんでいると感じる。この秋の頃はホペイの値段が少し上がる(笑)おっと、ここでこれだけはハッキリさせて頂きたい。そういう嫌らしい?話をしようというのではない。この肌寒くなる秋の頃は、ホペイの成虫に対しての需要が相対的に高まる時期なのかもしれない。ブリーダー達が、手持ちの個体を少し冷静になって見られるようになり(笑)、「もうすこしこうだったら、ああだったら」といわゆる・・・・・補強をしたくなる時期なのであろう。その結果、ホペイの成虫に対する需要が少し高まる・・・と言えば確かに自然な流れであるといえるかもしれない。
さて、そのように、まずは自分の血統を構築してみよう!!という取り組みは、ホペイ飼育の醍醐味の一つであり、熱量をぐっと高める取り組みの一つであろう。そして、ここで満足したら負け!!まだインラインには入らないぞ、もっと上を目指して、納得のいくスタートラインを引いてやるぜ!という取り組み・・・これこそが血統構築のスタートであり・・・何事においてもスタート時の熱量はトップクラスであることが多いように・・・ブリーダーの熱意・熱量が思い切り発現する瞬間ではないだろうか。
何が言いたいかというと・・・・私はようやく、同腹兄弟姉妹でインラインブリードを進め始めよう、スペックなどを炸裂させるより、もうポテンシャルはマックスクラスまで引き上げられているので、安定化と固定化を一部の血統については狙おう・・・こういう地道なステージに入りつつあるのである。灼熱のモチベーションというより、緻密で分析的な取り組み・・・チャレンジングな取り組みというより、守りのブリードに入っていこうという瞬間なのである。
そんな最中、ご投稿頂いた個体達を見させて頂くと、この個体達はこれから固定化に向けてインラインブリードの方向に舵を切られるのか・・・・それとも、まだまだブリーダーは個体を変化させる方向に動いていくのかという・・・・1頭1頭にある大切な岐路を見させて頂いている気分になるのである。これに対し、感謝の意を禁じ得ない。
成虫を見て次世代についての”ジャッジ”をする瞬間は、言い換えればホペイ飼育における種親選びという最大の醍醐味であり極意の一つなのである。各ブリーダーの次年度の岐路・そして最大の醍醐味を、投稿という形で見せて頂いていることには、大きなモチベーションと刺激を頂いていると感じている。
エントリーNo.61
飼育者:てっぺー さん
サイズ:75mmup
我が家で今年羽化したホペイの中で最もインパクトのあったホペイです。
エントリーNo.62
飼育者 ももすけ さん
・産地 福建省北峰
・累代 CBF1
・血統 張飛アウトライン
・体長 77.4
・頭幅 27.8
・顎 5.9
【コメント】
3カ年計画の1年め。
綺麗なツヤツヤ。
顎の個性と太さを伸ばしていきたい。
ハネ個体選手権で3回くらい敗者復活戦を勝ち上がったタイプ。
エントリーNo.63
飼育者 てっぺー さん
サイズ:68mmup
綺麗な子。
なぜだか写真を撮っていて楽しかったです。
エントリーNo.64
飼育者 てっぺー さん
サイズ:75mmup
迫力とゴツさが我が家では圧倒的でした。
エントリーNo.65
飼育者 ケースケ さん
体長 73.2
顎右 6.1
顎左 6.1
顎幅こそ無いですが、短歯でムキムキしてる感じが好みです
エントリーNo.66
飼育者 ももすけ さん
・産地 福建省北峰
・累代 CBF1
・血統 ももすけの。
・体長 72.6
・頭幅 27.1
・顎 6.2
【コメント】
顎先が内に入り、やや短歯。
思い入れ補正で好き。
エントリーNo.67
飼育者 ももすけ さん
・産地 福建省北峰
・累代 CBF1
・血統 関羽アウトライン
・体長 74.7
・頭幅 27.4
・顎 6.1
【コメント】
見た目と体長がリンクしなかった個体。
内歯がものすごく先に生えました。
エントリーNo.68
飼育者 YY
福建省北峰ラベル
体長:77.4mm
頭幅:28.4mm
エントリーNo.69
飼育者 ももすけ さん
・産地 福建省北峰
・累代 CBF1
・血統 51-①
・体長 77.0
・頭幅 28.0
・顎 6.6
【コメント】
スベスベな肌質。
よくまとまった個体。
エントリーNo.70
飼育者 KOB さん
産地 福建省北峰
・血統 GX50-X
・体長 79.8
・頭幅 28.5
・顎 7.4
エントリーNo.71
飼育者 髭神 さん
産地 福建省北峰
74-27.8-6.3
まろやかなホペイです。
【以下重要-今後のみんなのホペイについて】
ここまで総勢70個体超、多数のご投稿、改めてありがとうございました。
今後も「真・みんなのホペイ」は続けていきます
引き続き、どんどんご投稿ください!!
さて、それとは別にこの運営については方針を変えていきますので、その内容と意図について以下でご確認頂ければ幸いです。
①YoutubeLive配信中止
最大の理由は、私のコメントが入ることです。実はたった1年前の2022年・・・SNS上では、「ストレート系は不人気、湾曲が人気」と言われることが少なくありませんでした。
このトレンドは現在2023年10月時点、既に変化し始めていることは理解して頂くに難しくないでしょう。トレンドは変わります。その時その瞬間にスポットライトが当たるタイプ、そうではないタイプというものがどうしてもあります。
世の中には流行りというものがどうしてもあるのです。ホペイの形状についても、その流行りに浮き沈みがあることは自然なことですし、その上で特段憂うべきことでもないと私は考えています。そんなものですし、それが面白いのです。これまで日陰を歩いてきた個体達が、急にスポットライトを浴びるチャンスもあるわけです。今人気だからといって、あぐらをかいているわけにもいかないのです。それが、飼育文化を活性化させ、また育み続けるのでしょう。
さて、私はこれまでホペイ特化ブリーダーとしてホペイ飼育に取り組んできましたから、内面では流行り廃れに関係なく様々なタイプのホペイをフラットに見ています。それは、言い換えれば、マインドに限ってはトレンドという空気を読まないものを維持しているともいえます。これは今後もブレることはありません。
品評は、新たな価値観が生まれない限りは瞬発的なトレンドにはあまり左右されるべきではないと私は考えています。時流に合った形に品評を変えていき、また評価基準を変えることは必須ですが、品評の幹がぐらつくのはあまり好ましいとは思いません。その上で、しかしながらフラットな品評よりも、一時のトレンドの方が目立つ今日この頃、ストレートな品評をするのは中々難しくなりました。現在のトレンドも・過去のトレンドも・ホペイで良しとされるホペイ鑑賞文化由来の価値観もおしなべて総合的に品評をすればよいというのは理想論でしょうが、時間の関係上、1個体を究極に掘り下げきることは物理的に叶いません。
このことから、YoutubeLive配信で、限られた時間内で限られた観点から限定的なコメントをすることそのものが、近い将来、楽しみ方のトレンドからやや外れていくのではないかという懸念を持っています。
私は今後も鑑賞・品評の軸を、これまでのホペイ鑑賞の分化に則り大切にし、また個体を見る目も磨き続けますが・・・・これは私個人の取り組みの話。公にすることについては、このような事情から、マイナスについてはあまり言及・指摘をせず、どれもいいよね、というスタンスが一番楽しいのだと考えています。だからこそ、私のコメントを介さず、ブリーダーの皆様が投稿そのものを見て、投稿そのものからアレもいいな、コレもいいな、と感じ考えるような鑑賞をされる場を用意するのがベストというように考え直したということです。展覧会を周る時に、解説無しに自分の主観で作品を鑑賞したい・・・・そういうイメージでしょうか。
このような想いから、より個人に寄り添う個体紹介をするべく、YoutubeLive配信での鑑賞品評は中止をします。
➁過去の「SNSホぺコン」、今年度開始の「みんホぺ」は究極のボランティア活動
「SNSホぺコン」の頃から、「みんなのホペイ」まで、これらの活動に対する私の根本的な理念は変わりませんでした。『みなさんが、飼育された個体を、気兼ねなくお披露目できる場を提供したい』・・・これに尽きます。
「真・みんなのホペイ」は他のブリーダー様もLive配信にお招きし、スタートを切りました。現状、とてもうまくいっていると思います。好感触です。好感触のうちに、将来的に懸念されることについては改善・予防策を用意しておきたいものです。
「みんなのホペイ」は究極のボランティアです。都合や時間を割いていただく必要があります。その上で、超フラットな目線でコメントを頂く必要があります。当方はショップではありますが、これに限らず情報発信には営利目的を絡めないようにしています。利他的なマインドで取り組まないと、純度の高いエンタメ活動にすることが叶わないと考えているからです。
「みんなのホペイ」に関しては特に、利他的であることはベースであると考えています。番付すらないからです。絡んで頂く方には、文字通りみんなのホペイ・・・言い換えれば他の方の虫を立ててもらいたい。それは「みんなのホペイ」外でも、●●さんのNo.◆の個体、良かったよね・・・こういうスタンスで合って頂きたいというのが私の願いなのですが・・・
これを「趣味」に求める・・・ストレートな言い方をすれば「他人の趣味」に求めるのは違うな・・・と感じるわけです(笑)
ホペイ飼育のような、自己満足の個体を自己満足に追い求める世界では・・・他人の虫に対して興味が薄くなればなるほど、自身の虫に注目できている・・・自身の系統を注視出来ている・・・・即ち、ホペイ飼育の取り組みが高純度であると言える・・・こういった側面が少なからずあると私は考えています。
ですから、他人の虫を立て、ホペイ界隈を盛り上げるという大志を一般ブリーダーに求めるのは重過ぎると私の方では考えています。2021年ホぺコン・2022年ホぺコンの運営は大変でした。大変であることが、苦痛ではありませんでした。私にとっては、楽しい時間でした。しかし、純粋に楽しめなかった部分もあります。それは、運営の運営です。断っておきますが、嫌な思いをしたわけではありませんよ(笑)そうではなくて、趣味として取り組む一般ブリーダー様に、他者の飼育したホペイについて考える時間を頂いたり、その品評を取りまとめる時間や手間を割いていただくことについては、中々申し訳ない気持ちにも度々なったものだった、ということです。
現在に至るまで、その手間によって運営離脱が多かったことは既に皆様、確認されていると思いますが、そういうものです。趣味ですから、自分の虫を見ていたいものでしょう。
かといって、「みんなのホペイ」に絡むことによって、それをきっかけとして不用意に営利的なメリットが生じてしまうのも、コンセプトからはずれる現象であると考えています。このことから、デメリットやリスクがあるとは言いませんが、色々むずかしいなという抽象的な予感を感じているため、予感であるうちに形態を変化させて、今後も投稿者が気軽に投稿できる場として保持しようというのが当方の見解です。
③投稿しやすい場所
これまで、当方はホペイ飼育に対する思い入れの強さから、上記のようなコンセプトを個人的には掲げ、先述のようなマインドでこういった活動には取り組んできましたが・・・・最近の動向を考えると、もっともっとジャンクで敷居が低い方が面白いのだろうな、と感じています。
「真・みんなのホペイ」はそういうことで、
超簡素化します。
投稿頂いた個体が淡々と紹介され、更新されていく、文字通り投稿掲示板のような形にしていこうと思っています。今後も、どんどんご投稿ください。どんどん、紹介していきたいと思います。では、今後についてまとめます。
【2023年10月以降のみんなのホペイ】
・Youtube解説無し
・投稿頂いた個体を10個体集まり次第更新
※上記のように超簡素化
【2023年10月以降のみんなのホペイ-投稿法】
・XのDMか、ショップメールに以下を投稿
★飼育者名(HN)
★個体の情報(体長のみ必須)
★個体の説明(任意)
★個体の写真(Max6枚)
☆ホペイフリークのコメントを希望する場合はその旨を記載ください。その場合は私の方で品評をさせて頂きます。「お手柔らかに」「あまりマイナスを言わないでほしい」など歓迎ですので、ご投稿の際に好みを記載してください。私は言葉上正しいことより、楽しいことの方が趣味においては正しいと思っておりますので、刃物みたいなコメントは心の中で自分でやっておけば十分だと思っておりますから(笑)
【投稿例①】最も簡素な場合
飼育者:YY
体長:78㎜
コメント:なし
ホペイフリークのコメント不要
【投稿例➁】説明をする場合の参考に
飼育者:YY
体長:78.5㎜
コメント:
体長78.5㎜、頭幅30.0mm、顎幅8.4mm
幼虫最終計測体重は37gでした。
よくこんなに綺麗に羽化してくれたものだと驚いています。
大きくて大迫力の個体ですが、
☆ホペイフリークのコメント→希望
結果的に、超ゆるゆるの設定になってきていますが、それが良い、それで良いと私は考えています。楽しいのが一番だし、趣味なので自分の好きな個体を好きなように愛でるのが一番です。その上で、お披露目をしたいときにこの「真・みんなのホペイ」が一つの選択肢として候補に上がれば嬉しいです。