・体長:76.9mm
・頭幅:28.0mm
・顎幅:6.4mm
・顎厚:未計測
・羽化時期:2023年5月下旬~6月
2022年、2023年の湾曲注力については色々なことを言ってきましたが、「カッコいい湾曲」を誕生させたいというのは私の一つの大きなテーマでした。
湾曲顎が体現することが多いのは、まずは可愛らしさです。コロンと曲がった顎を持った個体は、もともとホペイ種の前胸や上翅がマイルドなシルエットであることが多いからか、可愛さを有すことが少なくありません。
次に、湾曲すると顎のシルエットの縦の長さが短くなりますから、個性的になることも湾曲顎の魅力でしょう。この顎の個性と唯一感は、「湾曲短歯」が流行し、このフレーズがホペイブリーダーのキラーワードになった背景に少なからず絡んでいることでしょう。
威圧感を醸す個体も少なくありません。「エグい」という言葉が連呼される時期もありました。思い切り張り出し、強引な曲がり方をする顎には威圧感があり迫力もあります。そういった曲がり方をすると、内歯付近の顎厚がでてきますから、言葉通りのエグさが魅力としてにじみ出てくるのです。エグいこたいというのは、誉め言葉でしたね。私は、「湾曲はズルい」と言っていました(笑)数値よりも数段太く分厚く魅せてくるのです。
可愛らしさを追求すると、やや華奢なっていくことがあります。エグさを追求すると、ブサ可愛い個体になることがあります。どちらも最高なのですが、どちらでもないジャンルを確立したかった。そういう野心が2023年度羽化の系統群の背景にはありました。
湾曲ジャンルに、
一発新しいのを突っ込んでみたい。
その新しいというものが「カッコいい湾曲個体」だったのでした。「美しく、スッキリした強湾曲個体」を出したい。このテーマを背負ったのが、DX50、そしてKX303でした。どちらも、キリっと張った頭部と、キュッと締まった前胸・上翅を持つ個体が多くなりました。
ホペイの大顎は個体の顔のようなものです。だから、どうしても顎を注視しがちです。しかし、完成度の高い個体は、顎が全体像に似合っており、顎以外の部位が顎の存在感を過不足無く引き立てている個体であると私は考えています。
顎だけを注視するような見方ではなくて、写真を撮る際に、少し距離を取って個体がフラットになるように写す。顎に寄せるようにしない。フレームカツカツではなくて、フレームにゆとりがあるような写し方をする。もし撮影するなら、そういう撮影の仕方をする。そんな見方をしたときの映え感・・・これが個体の完成度を分かりやすく表現する一つの指標であると、私は自身に落とし込んでいます。
バランスが良い個体は、カッコいいと言われます。整った個体も、カッコいいと言われることが多いです。まとまりが良いという表現もあるでしょう。顎よりもずっと面積が広い部位である、頭・前胸・上翅・・・これらのシルエットバランスの良さ・・・ここを絶妙に抑えることができれば、強引な湾曲顎を持っているのに、スッキリ美しい個体になるのではないか・・・・こういうことは、血統の構想を練る際に考えています。
特価生体コーナーラストの個体です。激安で出品する代わりに、ちょっと語らせて頂きました。この個体は、そういうテーマを良く体現してくれています。そして、こういう美しく凄みのある個体が発現できる血統の安定感が、超極太巨大個体発現の際の”軒並み完品”を成し遂げた一つの根拠であったのかと思うのです。
画像の通り、カッコいい個体です。ですが、手に取るとジワジワとこみ上げてくる、直観的なものとはまた違った味があります。鑑賞における、分かり味の一つでしょう。