S76改
2023年5月羽化
幼虫最終計測体重28g
体長74.5mm、頭幅28.5㎜、顎幅6.6mm
とんでもない映え感。カッコよすぎます。私が「背中線」と勝手に読んでいる個体の中央を通る部分、ど真ん中がもこっと盛り上がるような形状なのと、頭部がV字型にはっきりと張るからでしょうか。とにかくS76は映える映える。撮影している日は曇った空にぱらぱらと小雨が・・・正午前なのに外はかなり暗い・・・撮影に非常に不向きな日なのですがこの写り。
手に取った時にどうか、が一番大切なんですよ。だけど、写真にしたときに映え感が強い個体は間違いなく楽しい。屋外に出るというほんの少しだけの手間をかけてお気に入りの個体を撮影する・・・そしてじっくり写真でも観察する。最高の鑑賞法の一つだと考えています。肉眼で見た時には太さや威圧感といった”サイズ感”がものを言うことが多いですが、それはそういうシチュエーションで通用する文字通りピーキーな良さであり、こまか~いところを見てもその個体が優良かどうかは、写真で正直に見てみる必要があります。正直、写真が上手い方の虫は高度で綺麗なことが多いです。極太でも、ディンプルがあっても、拘りの強い部位に品格が表れることが多いように思います。それだけ細部を正直に見られるのが写真という正直なレンズを通した世界なのかな、と思っています。
だから、写真写りをわざとぼかしているケースは、それはそういうアートなんだと解釈していますが、写真が上手くない方は最終的に形状を突き詰めた飼育をしていくといずれ・・・フォルムの精度が頭打ちすると私は考えています。細かいところが見られなくて、その個体のチャームポイントをしっかりと写せないのに・・・つまり虫を見られていないのに、高等な虫を飼育することは難しいのではないかと思うのです。味の違いが分からないのに、高度な料理を作るのは難しい・・・・そんな感覚でしょうか。肉眼で虫を見る技量が非常に高いというケースもありますが、なら肉眼で見ているくらいに写そうというマインドになるのではないかな、というのがあり、肉眼で見て分かっているからというのはあまり信じていません。
顎幅のアベレージが年々向上していますが、これについて私は”意外と悪くない現象なんじゃないかな”と思っています。というのは、7付近の顎が特別であり、顎基部幅が7mmあったら問答無用ですごかった時代が終わりましたので、「顎7.0でダサい個体よりは顎6.7でカッコいほうがいいよね」とか「顎7.5あるけど形に拘ってるからカッコいいよ、ただ太いだけじゃない」という虫が出てきているな、と感じているからです。どうしても、その時の末端クラスの太さを出す系統には人気が集まりますが・・・・改めて「形」に注目が集まる系統もこれまた同時に強まってきたな、と感じているのです。カッコいい写真が増えたな、と思うからです。頭部に寄せまくったり顎だけ写しているような画像ではなくて、個体の全体がハッキリ写って、しかも美しい!カッコいい!と感じる個体が増えてきたな、と感じます。写し方にもバリエーションが出てきて、個体が色々な方向を向いていたりと、撮影者によって写真のカラーが分かれてきたように感じます。そんな風に、写真に過不足無い拘りを持って、実物+好ましい部位は10%プラスでいいと思いますが、110%くらいの写りの写真を撮れるブリーダーが増えていることは、間違いなく今後流通するホペイの形状のレベルを上げるし、形状追及の深度をさらに掘り下げる結果になっていくのではないかとワクワクしています。
なんて、達観したことを言ってしまいましたが、スミマセン、私の肉眼もまだまだカメラの正直な領域には入っておらず、お気に入りの雰囲気に仕上がった個体を見るととても良く見えてしまいます。写真にすると、「あぁ~、まだまだこの部分に造りの粗さがあるなぁ・・・」とか、「この部分が、なんだか不釣り合いな印象を醸してしまっているなぁ」ということを思うことがあるし、「写真にしてみたらめちゃくちゃいい!!」なんていうこともあります。後者が分かりやすいですね。本当は、顎頭前胸腹がとても似合っていてカッコよいのだけれど、小ぶりだとか、華奢だとかということで、その精密な造りに気づいていないことがある、ということなのでしょう。
肉眼で見ても写真にしてもカッコいい。
良い個体だと思いますが、もう一つ中々厄介な数値・・・・顎が6.6くらいなんですよ。世論を考えるとそんなに高額にできる数値ではないんですよね。でもカッコいい。これを出す方が顎7を出すより断然ハードルが高いよ。そういう個体なので、一度は販売候補にしましたがやめました。
顎閉じだと綺麗なrを描き、顎開きにすると基部からスパナみたいに真横に開く威圧感を体現する・・・その上バランスも良いし。各部位の形状も抜群。
S76はGXと同じような考え方で作られた系統なんですよ。GXを立ち上げた時の私の技量は今よりも少なかったから、それから数年経って更に虫の造り込み技術が上がった状態で同様の取り組みをしたらすごいんじゃないかな、って。
でも、GXの頃のように幅広い血統を手に入れられなくなっていたから、TP:EやHO8を再度入手することができなかった。そこで当家にいたTP:AやTP:Cをブレンドして作っていった。
私の好みの一つの形・・・・yyii68なんかが体現している方向に向かわせているので、S76とGX50の一部の系統は似ています。ただ、荒々しさと禍々しさを併せ持つGXと比較すると、品格とキレを纏った個体群になりました。
血統背景の違いと、より高度な部位形状への拘りが違いを生んだのでしょうか。もちろん、先行しているGXも・・・・これから紹介しますが、同レベルの品格とキレを有し始めてはいるのですが・・・。