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執筆者の写真YY

【本店ストック成虫No.23】S76改

S76改

2023年5月羽化

幼虫最終計測体重30g

体長76.1mm、頭幅29.4㎜、顎幅8.02mm

※2023年9月、1オス3メスで譲渡確定、譲渡済み

ようやくこのステージに入ってきたS76です。ここまでの道は険しかったです。2021年以誕生、ミチミチに詰まった顎基部と、顎閉じ蛹でほぼ全てを仕上げてくる強みを持っていますが、不思議な弱さを持っている系統でした。この血統を組み立てるにあたっての構想はGXの立ち上げと非常に似ていますし、意図的に似せていました。


考え方は結構、表現を選ばないで言うならおこがましいマインドで組み立てた系統です。当家の虫たちに共通するようなfunnyな威圧感を持っていますが、GXとは血縁関係がほぼありませんでした。S76というのは、GXを一旦あの高みにまで持ち上げた自分であれば、もう一度1から同じような血統の組み立て方をすればGX超えの血統を作れるのではないかという安直な(苦笑)考えで立ち上げました。


しかし、GXを立ち上げた時のようには自由に当時あった系統を入手することができませんでした。TP:E、HO8といった、GXの雰囲気の核となる系統を入手することができませんでした。同じ血統での構成ができませんでしたので、およそ以下のような血統構成となっていました。



・SL(TP:A)

・TP:C

・皇帝

・張飛

毎年最上位個体がずば抜けて化け物で、そして中々に難しさを抱えてくれます。今年度も頭幅31㎜クラスが蛹化、羽化まで行き、羽を伸ばすところまで行きましたがその後謎の突然死を遂げました。頭を持ち上げる前のことです。非常にきれいなまま、唐突に★になりました。


この個体は系統内2番手というところですが、このクラスは2021年には仕上がらなかったので及第です。2021年には蛹が仕上がっててもパーツ不足と腹太りでカンピンになれなかったレベル以上のものが完品になってくれました。


S76は2016年くらいから立ち上げを考えており、S76に至るまでの過程としてはS70-G、S70-32、S70-18という系統群がありました。GXがGX50になるまでは6年ほどの年月がかかっており、S76が立ち上がるまでは4年ほどの歳月がかかっておりますので、GXよりは2年ほど完成を急いだ系統です。そのツケはそこそこにはあったということですね。ただし、スペックや形状、なによりバランスについては時流の末端クラスの追随を許さないレベルで維持できています。

S76にはいくつか不思議な性質があります。アウト起爆能力が今のところ当家では確認できておらず、GXのようなスペックのインフレを引き起こすことがありません。インラインで堅実な成果を出してくる系統です。メスで身動きを取らないものがいます。しばらく放置しておくと通常通りの活動をするのですが、手に取ると足を開いてブンブンのように動かない(擬死行動ではない)をとるものが一定の割合おります。ホペイらしからぬ動きをするメスで、同様の動きをオスもすることがあります。おかげで撮影は超楽です(笑)ポージングをとってくれるのですから。

2023年のS76は、yyii68で調整をとりました。やっぱり、最後は手持ちの系統、それも大看板GX50-yyii68の力を借りたかったというところでした。結果的に、2021年初代では圧倒的なパーツ不足で苦戦したレベルがスパッと仕上がってしまいました。上翅の長さも眺めで、腹部よりも長いくらいなので腹の収納も早かったです。

S76は大きく3つのパターンの個体群を出してきます。

・非常にバランスの良い、滑らかな台形顎の美形個体

・ギラギラテカテカで工具のような鋭さを持ったセミロング顎形状の個体

・ゴツゴツムキムキのモンスター


特にゴツゴツムキムキのモンスターの仕上がりが難しそうではありましたが、そこをまとめてしまったのは68の血であると言わざるを得ません。これまで完品が難しかった異形個体を仕上げたのは、異形個体が仕上がる血ということでしょうか。従って、2023年のS76改の改とは、S76×yyii68ということであり、それが累代表記がCBF1に戻っている理由です。

幼虫販売でyyii68×S76を飛ばしていますので、心の中でガッツポーズを取った方がいらっしゃるかもしれませんが、スミマセン。あの辺りは試行系統です。


アウトでうまくいくと期待して次世代を採る・・・ということを私はよく行います。まだ見ぬ領域に踏み込むためにそうするか、不安定な血統や弱みがハッキリしている血統の調整を取るのがその主な目的です。ただし・・・これについて当家は非常に慎重で、アウト性能が高いGXであっても、交配の際には計画的な取り組みを行います。


S76については、まず2021年には交配計画を固めずに、2022年の羽化結果を見てから調整の計画を立てました。2021年に既にyyiiとのアウトが確定していたわけではなく、yyiiの羽化の状況を見てから交配を決めたということですね。そういうことだから、その年に使った種親を迂闊に放出するのは悪手です。結果を見てから、後出しができるので、特にオスについては。これは後ほど伏線を回収しますけどね。


そして、S76については、68オス(2年目の68-28.4初代)×複数のS76メスを行い、その結果成果を残した番手のものをS76改としたということです。複数の系統を立て、しっかりと成果を出した系統を残したということですね。


650頭飼育をして、ほぼすべてのオスを仕上げても成虫の頭数の合計数は結構少なくなります。理由は不全ではなく淘汰です。我が家の系統たちにはパーツ的な位置づけをする系統がいくつかあります。M44Sの血はまだ残っているし、DG-V1の血もまだ残っています。SY07Kや番手無し張飛、皇帝のブレンド等については3系統ほど保持しています。名前が消えているWX50-XEもきちんと残しています。2系統ほどありますね。公開していないものも多いです。上手くいかない場合は淘汰するし、今一歩な場合はパーツ系統として温存して、来年困った時に発動させます。




こういう域に達するには、1手で王手なんていう神業を打つのは中々難しいんですよ。それを針の穴を縫うように狙ってみることは多々あります(笑)でも、ド本命系統についてはやっぱり、ちゃんと保険は打つし成功率を高めるために系統も複数立てます。

そうやって、こういう優良系統が誕生してくるというのは間違いなくあります。上手くいかない失敗系統も生まれるわけです。それらを当家から出すことはありません。出さなくても良い成虫を揃えられるので、手にした方が次世代嬉しい系統を出していきたいし、そうしてホペイって最高に楽しい!の最高がもっと最高になればいいなと思っているからです。なにより、手間とコストと労力と頭と技術からひねり出された傑作系統を手に取る至福にはたまらないものがあります。これで、S76改は安心してインラインで進められる域に入ってきたし・・・今年はGX50-yyii68-2023年verの♀も多めに確保しているので、さらに調整を取り、起爆させるという算段もそろっています。こんな感じで系統組み立てを練っていくのはとても面白いですね。


こういう方法があるよ!こういう観点があるよ!というのは読者の皆様にとっては興味深いのかな、と思いますが、「ある程度数を打って手間暇コストをかけてできてる系統ももちろんありますよ」という赤裸々な系統背景を知って頂くのも必要かな、ということで今回はこんな内容でした。



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