KX8.3
2023年5月羽化
幼虫最終計測体重36g
体長78mm付近、頭幅28.5㎜、顎幅9オーバー(9.07ほど)
蛹化から羽化までフルサポートで自身の持ち得る技法を総動員して立ち会いましたが仕上げきれませんでした。これが顎9の領域ということですね。洗礼は受けましたが、受けて立とうと思います。無事硬化しました。
羽化時は上翅を閉じましたが、腹部圧迫による★回避のためにその後人為的に上翅を開きました。内翅は両方の一部をカット、完全乾燥状態にしましたが、顎幅が9を割ることはありませんでした。化け物です。
その後、無事に硬化し、今は挟まれると激痛!というレベルにまで持ってくることができました。それでも短命だと思われます。
これは難しいです。多分唯一無二の極太遺伝子を持っています。それは興味深いので、次世代で天井をこじ開ける親であることは間違いありません。しかし、メス親を適切に選ばないと全崩壊する瀬戸際にいる個体でもあると感じます。
羽化時に顎9を保持した個体たちはKX8.3には3頭おります。3頭はそれぞれ仕上がり加減が微妙に違います。そういうことを次世代でやらなといけないような気がします。このオスをお盆明けの頃、後食開始と同時にペアリングし種を残しておき・・・・次世代で徹底的に立ち会いまくって仕上げる。次世代ではこのクラスが更に多く出てくると思われますので、より多くの9台を得ることができるのでしょう。その9台の個体達の中で微妙に仕上がりの違いが出てくるのだと思われます。仕上がれた個体を残し、その次につなぐ・・・最短でF4で顎9血統と呼ぶことができるレベルに持っていく感じですね。
この理屈で行くと、より多くの9を得ることがより9の完品を得る可能性をあげるということになりますが、9の発現率を高めるとどうしようもない不全因子の炸裂っぷりも増してくるはずなので、より多くの9顎を得ることに注力するのは得策とは言えないかもしれません。
つまり、もう一つ、この個体を使って8顎が連発するような系統を作り、それらが完品で仕上がり・・・ごくわずかに9顎が混ざり、それも完品になるというKX303のような塩梅に持っていくという方法も手札として残しておかないといけないな、と考えています。
つまり、
A.9顎をより多く得ることで9顎が完品で仕上がれる可能性を増やす
B.9顎を減らすことで仕上がり力を向上させ9顎でも仕上げる系統を目指す
この相反する二つをうまい具合にやっていかなければいけないということなんじゃないかなぁと思っています。机上の空論ですが、空論でも立てておかないとまぁ上手くはいかないと思っています。
中々難しいのは、こういう血づくりには犠牲が伴うということです。不全が多く出ますから、可愛そうな虫も増えてきます。私は不全に対しての耐性が皆無なので、メンタルが死ぬ可能性があります。立ち合いをやり切っても、罪悪感に苛まれて血づくりがとん挫するかもしれません。
今のところ、こういった超絶9顎個体を仕上げる方法を1つ・・・1つだけ考え付いています。その1つにかける!というのが正解だと思っています。当たれば、軒並み9顎が仕上がってきそうです。しかし、その方法が”技術”を伴うものであるというのがネックです。
知っている知らないではなく、超精密なフォローをしないといけない。超精密なフォローを特定の難しい部位に対して超スピーディーにやることによって、こういうクラスが仕上がるように思います。多分合っていますが、この方法だと、どうするかが分かっていてもできるかどうかが微妙という域に入ってきます。
そのミクロレベルの業を常に発動させるのはとてもつらいので、AでもBでもない方法を考えています。Aは一般論的な考え方でしょう。王道だと思われます。Bは少し離れ業ですが、でもこれもある程度は主流なのかな、と思っています。
7.5mm超級については、確かに主流が通用しないことがある領域ではありますが、王道主流+小技でなんとかできる領域でした。そして、7.5㎜超級~8㎜台までは、知識と技術でなんとかできる領域になりました。しかし9は違う・・・そう感じています。蛹が仕上がっている、だからなんだ、というレベルの難しさがあります。手が届きそうで届かないようなそういう領域に感じられます。手を伸ばせば届きそうに見える夜空の星並みには、完品までの距離があるように思われます。
そこに向かって、”速度を上げる”という王道で臨んでも、何光年という単位を短くすることは難しそうだと、そんなイメージを感じます。
ただ、私の得意技(笑)は補助だけではありませんのでね・・・補助は一つの裏技みたいなものだと思っています。補助技術の多くを反則技だとは思っていませんが、ちょっとした裏技的な位置づけだなと思っています。どうせやるなら極めようと極めているだけです。
私の専門は血づくりの方です。毎年新作を出しても、その新作達がピカ一の存在感を放ってくれる。ジャンルを問わず手を出し、色々な方向の形状発現を引きずり出すということをやってきていますから・・・
今のところ、9顎の完品については、以下の3点で2年以内に仕上げちゃおうと考えています。
A.9顎をより多く得ることで9顎が完品で仕上がれる可能性を増やす
B.9顎を減らすことで仕上がり力を向上させ9顎でも仕上げる系統を目指す
C.9顎が仕上がる系統を新たに立てる
血統屋としては、専門を思い切りやり込もうと思っています。それは血づくりです。補助やオペでは届かない領域があります。血づくりができないと達せない域があるので、血づくりで9顎については仕上げたいなと考えています。AとBの主流的な取り組みは行いますが、それらはコケる前提で少しやっておこうかな・・・というくらいにしておいて・・・・
こういった9顎オスを親として、血の調整を行い、9が仕上がれる系統を立てていこうというのが今の私の主流です。