長く時間がかかってしまいました。おざなりにしていたわけではなく、エントリー締め切りから2024年10月29日本日まで、The Hopei Awards2024の入選者選定は常にファーストプライオリティにしておりました。その上で、やっぱり難しかった!というのが本心です。
特に、今回は”写真コンテストではない”というところがネックでした。これまで当方が運営してきた、
・2021年SNSホぺコン初回
・2022年SNSホぺコン2回目
・2023年ホぺコン(中止)、2023年みんなのホペイ
これらは、基本的には写真のコンテストであり、実物がどうかということももちろん大切でしたが、写真でどのくらい個体がパフォーマンスを発揮したかということが評価の主軸でした。
これに対し、今年度開催のThe Hopei Awards2024は、
・低い敷居
・リアリティ
この2点が特に重視されたことが特徴です。
文化には、副作用というものがどうしてもあるように感じています。写真でコンテストをする・・・・・写真で支持を集めるという文化色が強かったホペイについては、個体の撮影法を工夫するブリーダーが多く、これはとても良き文化であると当方は考えております。一方で、写真で太く見えれば数値詐称ができる・・・写真そのものを若干悪い意味で調整し、悪い意味で実物以上に見せるという技法が開拓されてしまったのも否めないでしょう。
当方は、今年度顎幅8㎜超級を2桁頭誕生させ、個体はもちろん計測画像も「本店ストック個体」で紹介していますが、ある程度超ハイスペックの数量的感覚を正しく持つと、その数値はないですよね・・・という個体が散見します。こういうことを書くと、ホペイを飼育していない方は特に「もっと実物の数値は低いのかな」と思われるかもしれませんが、計測の様子を公開する文化色が非常に薄いホペイの世界では逆のことが多そうです。
その見た目でその体長だと、顎幅は9㎜台に近づくんじゃないかなというように、もっと数値があるはずだよ・・・というケースが増えてきています。内羽は本当はカットしたよね?という個体も多々見受けられます。完品羽化したかもしれないけれど、その後★になっていそうですね?とか、その個体は自力で羽化していないね。自力で羽化したら内羽はそのように拠れないですよ・・・・その色で頭は持ち上がりませんよ・・・・等など、ちょっとバーチャルになり過ぎているな・・・というのは、写真で個体の評価を決めるという文化の副作用であると感じております。
このようなコンテストを行うと、”もっとすごい個体はいる”という声が必ずと言っていいほど出てきますが、であればThe Hopei Awards2025に出しましょう、の一言です。体長部門入選個体よりも大きな個体が存在するなら・・・極太顎部門の入選個体よりも太く見える顎の個体を所持しているなら・・・・ぜひThe Hopei Awards2025に出しましょう。私が実物を手に取って写真撮影します。それらの個体にはリアリティがあるし、そういう設定のコンテストに応募した個体群にもリアリティがあります。ここが、The Hopei Awardsの大きな醍醐味の一つであるとしています。
写真撮影は大変です。これまでは、ホペイがそのように鑑賞されてきたように、
・顎閉じ画像
・顎開き画像
・フリーショット
をお願いしてきましたが、そこまで厳密にしなくても良いようにしました。エントリーに当たって、多忙な中虫を入魂撮影するのには骨が折れます。そのような相談も頂きましたので、多少ピントが合っていなくても当方で補正して見ますから大丈夫ですよ、というように、写真撮影という最大のハードルを下げたというのも今回のコンテストの特徴です。
どうしても、2020年頃から「写真で見るような個体が出てこない」「写真で見るような実物を見たことがない」「世間で言われるほど幼虫の頭幅14超級が出ない、顎7も自分の個体以外でも見ない」といった相談をもらうことが増えてきています。バーチャルな世界観はそれはそれで楽しくてよいものだと思っておりますが、過度に現実離れするとなるとそれは話が変わってきます。撮影が決まりやすいデバイスの技術向上や、アプリの充実に伴いやや現実離れしすぎたところも否めないホペイ飼育。この文かの中で、どこまでリアリティあるコンテストを、どれだけ低いハードルで行えるか・・・ネタバラシをするなら、それがThe Hopei Awards2024に込めた当方の真の価値観でもありました。
その結果、入選個体選出には非常に骨が折れました。実物はどうだろう。これを徹底的に検証しておりました。時には、どうようのボケ感や、同様の暗さというように、同様の写りのエラーを手持ちの個体で実践しながら実物補正をして見る・・・そこまで×41頭に行いながら、入選個体選別をする必要があった・・・・その結果、入選個体選出に非常に時間がかかったというのが、The Hopei Awards2024の裏話でもあります。そこまでやっていますので、入選個体については間違いないというくらいには詰めてあります。
それでは、前置きが長くなりましたが、入選個体の発表・紹介をしていきます。
尚、先にご説明の通り、「応募しやすいよう」に、また、「幅広いジャンルや美意識をカバーできるように」という目的から部門を分けておりますが、入選については全エントリー個体からその部門でトップに相応しいと考えられる個体を選出していますので、各部門というエリア内だけでの番付ではありませんので、改めてご承知おきください。
①体長部門入選個体
Mr.Pさん
入選個体コード:24GX50-yyii294-HW
北峰産83.5mm
頭 29.7 顎 7.7 厚 6.0 I
use my own made 菌糸瓶_MYCOMEAL.
20230513 L1 20230806 35g
20230915 38g
20231027 39g
20240105 前蛹29.4g
20240303 羽化
体長レコード越えは圧巻の一言。しかも、この太さです。
➁おお顎の太さ部門
わたぼんさん
入選個体コード:24OS-RGX-03-HW
北峰産体長未記載
闘牛の様な前傾姿勢が特徴的な個体。真上から写真を撮っても尖った写りは陰りません。飛び出した内歯のアクセントも魅力を加速させている1頭。
おお顎の太さを、基部幅という1次元で測るのはもったいない。極太顎個体というのは、おお顎の迫力が凄い個体!であるならば、その形状、立体感、基部がどれほど広く見えるかという見え方、そして厚み・・・こういったことまで加味して見ていくべきでしょう。顎の存在感は圧巻の一言。
③巨頭逆三角形形状部門
Mr.Aさん
入選個体コード:24S76-2302-HWG
北峰産76㎜
強烈な頭!頭部の分厚さが圧倒的です。おお顎については重なりも本当に過不足無く100%。存在感が強烈な1頭です。
凄い頭!左右にパンパンに張っており、体長も十分。小さな個体ではないのに、小さな個体以上に切れ味を有したシルエットを体現できているのがスゴイ。また、頭の分厚さにも注目したい。頭前方から頭楯までの高低差はすさまじいの一言。そんな極端な個体が、綺麗な体表まで揃えて仕上がっていることは、飼育者の技量と熱量を雄弁に語ってくれるでしょう。
④角ばった湾曲顎部門
茶まるさん
入選個体コード:24LG24-HW
北峰産体長未記載
超豪快な湾曲個体です。20年前にこんな個体がいたら、ひっくり返っていたことでしょう。
角顎もここまでいくとインドシナ系クルビデンスみたいな雰囲気になってきますね。おお顎のシルエットが角ばっているだけではなく、張り出しが強いところもこの個体の顎の威圧感を高めていることでしょう。
⑤丸みを帯びた湾曲顎部門
佐々木 剛司さん
入選個体コード:24GX50-yyii8.1⑦-HW
北峰産75.0㎜
2024年6月羽化
手にした瞬間からカッコいいなあと感じた個体です。面がきれいで素直な大顎と顔上・眼下突起の厳つささ、おでこの曲線・頭部のボリューム感が魅力の1頭です。締まった胸部が引き立ててくれているのかなと考察しています。是非、色々な方々に観て頂きたく応募致しました。
今回のThe Hopei Awards2024では、真円に近い個体の応募は無かったなという印象です。丸顎は昔から良き形の一つとされているだけあり、難しい部門の一つでしょう。外歯に丸みを持たせることは比較的簡単なのですが、内歯をそこに綺麗に重ねること・エッジエッジ!と言われてきたように、内歯のエッジ・稜線がキリっとしていること・内歯と外歯が綺麗に重なること・おお顎のカーブが滑らかに最後まで続くことを揃えなければいけません。このような観点でこの個体を観察すると、とにかく顎の湾曲加減が優美である、の一言。
⑥台形顎部門
T.Hさん
入選個体コード:24T.H-T.G×TX2023-HW
北峰産75㎜
張り出し・湾曲・顎先の入りという台形シルエットに必要な3要素を抑えているだけでなく、稜線まで美しい個体です。
台形顎が一つの王道とされている理由は、まずおお顎の形で良しとされてきた造形を揃えやすいということが一つでしょう。強い張り出しと、入った顎先を揃えるとおのずと台形に近くなってきます。また、そういった顎を有すると、重心が上半身寄りに見えやすいですから、スタイルが良く見えるという効果もあるわけです。本個体は、おお顎がメリハリの効いた台形であるだけではなく、全体像が美しくスタイルも非常に良く見えます。このトータルバランスの整い方がこの個体の魅力、でしょう。
⑦ストレート顎部門
ROSSANAさん
入選個体コード:24♠7.8➁-HW
北峰産69㎜
『本当に突き刺さっていきそうな顎』と、『キュッと締まったお尻』を持ったスタイリッシュなホペイ。中々手に取った時の印象を言葉にすることが難しいですが、魅力いっぱいの個体です。
やはりストレート部門の決め手は顎がどれだけストレートであるか。それは、内歯と外歯がどれだけ前を向くか。この1本でしょう。そこを忠実に揃えた個体・・・曲がらない内歯・・・・この1択でした。
⑧セミロング顎部門
IDCさん
入選個体コード:24GX50-X8-HW
ホペイは体長を意識してブリードしていませんが、
バランスを保ったまま大型になってくれました。
セミロング顎というタイプは、血統や派閥という言葉を使ってしまってもいきすぎでないほど、支持者が多いタイプでしょう。顎が長すぎず短すぎず、また曲がり過ぎず真っすぐすぎもせず、良い塩梅にある・・・・つまり、バランスが良くスタイルが良いということでしょうか。そんなホペイに求められる形状の醍醐味と言ってよいほどのエッセンスを大きな体長でまとめ切ったこの個体、文句なしの1頭でしょう。
⑨ロング顎部門
横山幸雄さん
入選個体コード:♠7.8④-HW
北峰産77mm.
今年フィーバーした、一番気になっていたラインです。
おお顎が長い個体は多数いましたが、ロングと唱えるからには長さにある程度のインパクトが欲しい。ロング顎というと、とにかく幹となる顎と外歯に拘る方が多いですが、実は内歯も長さの個体差が大きな部位。ここが長く、しかも外歯に似合っていること・・・・外歯と内歯が共に長いロングロング・・・という観点で見ていくと、長めの顎の個体が多くエントリーされた今回のThe Hopei Awardsにおいても、ロング顎の入選個体はこの1頭1拓に絞られました。
➉バランス&美形&美肌部門
IDCさん
入選個体コード:24北峰A-HW
北峰産72mm
いわゆるH8年型に継ぎ足ししながらですが20年以上続けている大切なラインです。 太くも無いし奇抜さも無いのでこのレベルは偶然にでも出せそうですが意外と出ないと思います。
美しさと凄みを揃えた個体です。バランスも抜群。まさにバランス&美形&美肌という言葉がぴったり。文句なしの1頭でしょう。
⑪特殊形状部門
わたぼんさん
入選個体コード:24GX50-X(U2)-HW
北峰産78.0㎜
超バルク感故にどの部門にエントリーするか悩んだ!とのこと。納得の分厚さ・太さと、洗練された顎の両立を図っている個体です。
特殊形状という言葉は、結構広い言葉だな・・・と感じました。色々な捉え方があるのでしょう。比較的、”極端な形”のエントリーが多かったように思います。湾曲であれば、豪快な湾曲・・・・極太であれば、超太い顎・・・・そういう極端な形状は、されど既存の形状の延長にあると言えてしまうという側面もあるでしょう。特殊というからには、「唯一感」と「種離れした形」の二つを揃えたいところ。そういう観点で見ていくと、本個体は圧倒的な分厚さ・体積を有しており、前胸の威圧感はずば抜けています。湾曲にしても、極太にしても、かつてからブリーダーがまだ見ぬ個体として思い描いた色々な個体があったとは思いますが、ここまでの立体感は思い描いていたでしょうか・・・そんな気持ちになった為、本個体を異端個体として選出しました。
⑫血統部門
KOBさん
入選個体コード:24yyii68-HW
北峰産75.5㎜
昨シーズンからyy血統のみに絞り込み、GX50系、yyii系、隠し玉としてA160AGの3系統にチャレンジしました。 その中でも、初代yyii68の形状を狙い組んだラインでしたが、形状は異なるものの満足行く個体がでました。 GX50-Xでのエントリーも考えましたが、こちらは目指すゴールが遠く、いまだ納得の行く領域まで到達していないため、血統愛はGX50-Xに劣るかもしれませんが、それを上回ってきた血統yyii68でエントリーいたします。
・血統名_yyii68
・累代_F3
血統に拘るブリーダーが多いという印象のホペイの世界。私の主観でもなく、そうなのかなと感じています。血統に関する質問も多いです。そんな中でエントリーされたこの個体。背景としては、結果を出したということが思い入れの軸にあるのでしょうか。色々な血統に対する美意識がありそうですから、この部門が来年はもっとにぎわって、もっと色々な血統愛が集まるといいですね。さて、血統部門ということですが、他部門でもダブル受賞してしまうんじゃないかというほどの存在感を持った個体。血統以前に、個体に唸らされました。カッコいい・凄いの二言です。
★特別部門
The Hopei Awards2024
Grand Chapion
Mr.Aさん
入選個体コード:24S76-2302-HWG
大きくて、迫力があって、バランスが良く、仕上がりも美しい。
そういう基本を、説明不要なレベルで分かりやすく抑えている個体です。
頭部の張り、逆三角形のシルエット、張り出しや湾曲が美しい顎、鋭い眼上突起といった、ホペイブリーダーの多くが拘る部位形状も忠実に抑えています。特に、内歯と外歯の重なりが非常に美しい。
さらに、オーラ・威圧感・存在感といった、ただ優等生なだけではない・・・・格別の存在感を醸すスパイスをちゃんと有した個体でもあります。
やっぱりホペイはトータル評価だよね。
ということを突き付けてきた本個体、久しぶりに唸らされました。
まいりました、の一言です(笑)
特別部門の景品
【24本店ストック成虫No.9】GX50-X9①
【生体情報】
◆種類:ホペイ/ホーペ/ホーペイオオクワガタ
◆学名:Dorcus hopei hopei
◆産地:福建省北峰
◆累代:F4(同腹兄弟姉妹同士交配純インラインブリード)
◆血統名:GX50-X
◆グループ:GX50-X9
◆系統番手名:GX50-X9①
体長:73.5㎜
頭幅:28.6㎜
顎幅:7.0㎜
顎厚:5.4㎜
それでは、これから入選者様には順番にご案内を差し上げます。
改めまして、この度はThe Hopei Awards2024を盛り上げて下さりありがとうございました!入選個体は、次回以降の「ホペイの世界」で順に公開していきます!どうしても、公開には複数回必要だと思われますので、公開がかなり先になる個体もいるでしょうがご了承ください(次号は特集の関係で「ホペイの世界」が休載予定ということもありますし。)。
ということで、まずは各個体の特設ページの開設を楽しみにお待ちください。
私の方で、バチギメで撮影して公開します!
来年は、更に熱い熱いコンテストにしましょう!!