当店の蛹室凸型は全てあおい様(@aoi_derbyana)にお願いをしています
特注設計を承ってもらえますので、”こんな種の対応モデルが欲しい”という方はぜひお問い合わせください
商品ページは以下からご覧ください
【誕生背景】
2020年頃より頂くことが増えた、国産オオクワガタの特大個体対応の人工蛹室。当方はこれまでは手掘りでご協力をしてきましたが、要望が年々増えてきており、特注のフレームを保持しているお客様もいらっしゃることから、「国産オオクワガタの体長狙い飼育に特化した凸型」の作成を行いました。
【大型血統の完品羽化に向けて】
当方も国産オオクワガタについては能勢・久留米・川西と飼育経験があり、またそれらの特大前蛹や蛹をお預かりした経験があります。特に体長をとることに特化したタイプの血統ものには、比較的縦横比率の高さが優先される傾向が強いホペイオオクワガタの血統ものとはまた異なった蛹化習性・蛹形状・羽化習性・羽化形状があると感じています。形状やサイズが異なるのは当然ですが、蛹の材質なども(皮の質)やや異なり、ボディーがドーンと大きな前蛹が思い切り上下に伸びるという習性に合わせた蛹室形状を用意することが、よりスムーズな変態に繋がるということは2024年時の当店の見解です。
人工蛹室は、その性能をきちんと発揮するためには、適切に使用をすることが有効です。適切というのは以下の2点です。
①前蛹の頃から蛹室に移す
排水をしながら、真上を向けるように”その蛹室に合わせた形”に変形します。ゆがんだ蛹室内では、前蛹はゆがんだ前蛹になってしまうということです。こういった些細なことが、極太にしても特大にしても末端のレベルの個体には大きなことに変わります。前蛹の段階から上下左右が均等な蛹室に移し、均等に排水させ、均等な形状から蛹化を開始させることは非常に大切です。適切な形状の蛹化を促すことが、完品羽化につながるからです(蛹化不全が羽化不全に直結するからです)。
➁きちんとローリングさせる
蛹室内で蛹はくるくると回ります。刺激をすると回転するのは周知でしょうが、刺激をせずとも定期的に寝返りをうち、内部形成が均一になるようにしているのです。寝返りができなかった蛹からの成虫は前胸背板に特に、蛹の形状由来のディンプルができることが多く、特大や極太個体では羽化前に色づきが甘い部分があるなど内部形成が不均等になることも確認できるでしょう。これに対し、しっかり回転できた蛹は羽化も円滑であることが多いです。当店の凸型で作成した蛹室は、蛹がローリングしやすいような背面傾斜にしていますが、特殊形状個体等ローリングが難しそうな場合はお尻の方を指で押して少し下げてあげると(傾斜を急にする)更に安心です。
【適切な蛹室形状から得られること】
2024年は、当店では新型の24凸型YY-ver.と、凸型MEを使って蛹の管理をしましたが、確かに手ごたえは良好です。まず、以下のような極美個体が、きちんとローリングすることによって前胸背板の過剰形成(ディンプル形成)を軽減させ、美しい体表で羽化してくるようになりました。
GX50-yyii8.1F➁
太くてガタイが良い個体であるが、ディンプルが非常に少なく、体表が美しい。この個体も、蛹時にしっかりとローリングさせられなかったらディンプルを形成していた可能性が高い。
蛹室の使用については、上記の2点を抑えて頂ければ問題はありません。ただし、極太や特大については以下に更に留意すると成果が良いというのが当店の見解です。特大個体や極太個体は、幼虫時に腹にあった体積を思い切り上半身に移す必要があります。透明で黄色い段階で蛹を触ったり軽量する様子などを見ますが、末端クラスのスペックを狙う飼育においては非常に危険な行為です。蛹は粉を吹き蛹が固くなるまで膨張を続けます。こうやって、多量の体液を、太い/長いおお顎・大きな頭・広い前胸背板へ流していくのです。
体液は、蛹がギュッと縮むことで上半身へ流れます。蛹は一度力を緩ませてしまうと、元の圧力まで縮むのに苦労をします。これが、透明感が残る段階で触らない方が良いい理由です。また、蛹室の背面傾斜を使って腹部を圧っし、体液を上に持ち上げます。当店の人工蛹室の背面傾斜には、こういった体液の持ち上げを助ける意図があります。
♠7.8④
顎幅7.7㎜
上羽に皺が深く刻まれることが多い顎7超級のなかでも、更に上翅の仕上がりが厳しくなってくる顎7.5㎜超級であり、コンマ5mm刻みが羽化のハードルを上げていく世界において、綺麗な上羽を有している。
【24モデルに共通す当店の人工蛹室設計のコンセプト】
従って、蛹室の使用については先の2点をご参照頂ければ安心であるとして、蛹室の摂家において大切なことは要するに以下の3点です。
・上下左右が均等であること
・蛹の膨張に適した背面傾斜であること
・蛹のローリングに適した側面傾斜であること
小さな個体や累代が浅い個体は、蛹の羽が多少折れていても問題なく羽化します。ワイルドに近しい血統も、適当な蛹室で綺麗に羽化してきます。ティッシュで適当に作ったスペースで羽化できますし、なんならルアーケースでも大丈夫です。
これに比べ、超特大個体は、超極太個体同様、やはり細かいところに拘らなければいけません。運に恵まれることもあるでしょうが、実力で超末端個体を誕生させたい場合は、温度や餌や色々な管理に気を配らなければ難しいということですね。極太血統や大型血統の飼育が難しいと言っているわけではなくて、その時代の最先端を狙うなら、繊細なことも必要になってきて当然であるということですね。
【LimitLess】
どんな飼育についても超末端の飼育には繊細なところがあるでしょうが、その繊細で小さな針の穴を通した個体を見たいというブリーダーの探求心には際限がありませんし、その探求心に虫も際限なく応えてくれるものです。
まさにLimitLess・・・・果てしない・際限のない世界が、超大型飼育の世界の醍醐味なのでしょう。そんな果てしなく際限のないブリーダーと虫たちに応えるべく設計したモデルが、人工蛹室凸型LL(LimitLess)です。
【人工蛹室凸型LL誕生の裏側】
それでは、人工蛹室凸型LL(LimitLess)の誕生背景を紹介していきます。
手掘りのモデルからスタートしており、それを型取りして内部構造を設計するという、これまでにない手順で設計をしています。
側面の形状や、背面傾斜の形状を確認します。
こちらがプロトモデル。人工蛹室凸型は、原価が高いので、開発費も嵩張っています。できれば1回で形状を決めたいところですが、しっかり性能確認がとれるまでは当然世の中には出せません。尚、背面の傾斜度合いについては既に極太個体の仕上がりが良好である(Youtubeのショート動画をご覧ください)MEのものを採用しているので、今回の設計では蛹のローリング性能を確認できればOKという流れでした。
プロトモデルに蛹を入れてみましたが、惜しい!!やや側面傾斜に問題がありました。
側面傾斜の調整を依頼していきます。
側面は可能な限り絶壁に近く、底面は前蛹が安定するように中央部がへこんでいる必要があります。側面のカーブが強いと、蛹がずり落ちて上手く反転しにくいのです。
このように、側面傾斜を急にしていきます。
こちらが出来上がったモデルです。MEやLLは、超特大前蛹を入れる蛹室ですから、底面はややフラットにして、幅広前蛹が横たわりやすいようにしています。
背面傾斜も抜群です。
完成です。1つのプロトモデルを経由し、イメージ通りの設計ができました。
幅は約56㎜、長さは137㎜です。
幅については、当方の飼育したGX50-Xの頭幅30.7㎜個体が問題なく入るということでこのような広さにしています。長さは、羽化時の成虫体長に対し、腹と後翅が露出する長さの比で設計をしています。
基本的には、人工蛹室MEの幅を少し広くして、背面傾斜をMEと同様のものにするというコンセプトで設計をしています。また、成虫の頭側については、おお顎が長い個体が問題なく頭を持ち上げられるように、やや深くしてあります。
【ご注文は以下より】
非情に丈夫で、半永久的に使える人工蛹室凸型LL。御注文は以下よりお願い致します。なお、縦の長さが長い設計になっておりますので、ロックパックを使用される場合はロックパックワイドSをご利用いただくとぴったり収まります。