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執筆者の写真YY

人工蛹室凸型-24YYver.

2018年頃からスポンジ蛹室の一時廃盤をきっかけとして試行錯誤を続けてきた当方のオアシス製の人工蛹室に関する商品、人工蛹室凸型の紹介です。


2022年冬頃には、およそ形状は当方が考える最適解に近いものになっていました。内部形状が難しく、ボトル内に作られた理想的な形であろうと思われる蛹室の形状を踏まえて、かつウレタンスポンジ製で適切な形に変形する必要がありました。


蛹化に特化したモデルや、羽化に特化したモデルの設計にはさほど苦労をしませんでしたが、蛹化と羽化の両方に対して、通して使える形状の設計には多くの試行錯誤と時間を要しました。仕上がりが美しくても性能が伴わなければいけないのですが、仕上がりが美しくなくとも内部構造や角度の設計が適切であればきちんと完品羽化率を高めるのが人工蛹室です。

蛹化特化モデルと、羽化特化モデルがあると申し上げましたが、蛹化羽化について少し整理をして説明をします。


◆蛹化と羽化のどちらが完品羽化に影響力をもたらすか◆

蛹化と羽化、どちらの瞬間の方が完品成虫の羽化に影響をするかと問われれば、その答えは間違いなく「蛹化時」です。蛹化は、すべてが柔らかい状態から、甲虫の色々な部位の型が作られるプロセスであると理解してください。蛹化が正常に行われれば、正常にパーツが作られるので、組み立てに当たる羽化の段階で不自然なことは起きにくいということです。逆に、蛹化の段階で正常に各部位が形成されないと、おかしな部位が形成され、羽化の際に適切に組み立てられないと理解して頂ければと存じます。


【ボトルの壁面に作られた蛹室は左右が非対称であることが多い】

ボトル側面、かつボトルの底に作られた蛹室は、ボトルの壁面の傾斜のせいでバナナ型になり、ボトル底面の凹凸により底も左右が非対称になることがほとんどです。これが蛹化不全の主要な原因です。そして、その蛹化不全が羽化不全の主要な原因です。このような出来事の理解については時系列がとても大切です。点で理解しても、その理解は結果の後付にすぎないことが多いです。当方はわざとびちゃびちゃに濡らした蛹室で蛹化羽化をさせる実験を何度も行っていますが、高湿度が感染症を引きおこす傾向は感じるものの、蛹全体が濡れた状態で羽化に臨ませても正常に羽化をします。問題は蛹室の形状が上下左右全てにおいて非対称であることです。


前蛹の中はふにゃふにゃの蛹です。困ったことに、この蛹の各部位をずらしたり動かしたりすることができてしまいます。ですから、皮を脱ぐときに左右非対称に脱げるとパーツも左右非対称にゆがむのです。



細物が自力で蛹化するのは当たり前であり、羽化するのも当たり前です。太物や特大ものの蛹化が特に難しいのです。頭が巨大な前蛹の顎から超極太顎が出てくるのです。その前に頭も割れにくいのです。特大幼虫は、逆に下半身の方に苦労が見られることが多いのです。大きな腹から幼虫の皮を脱ぎ切らなければならないからです。


極太ものは、蛹化の前半の段階で既に顎がとても太いです。これが脱げにくいのです。



中々頭部が割れず、中々顎が抜けません。





このように、顎が中々脱げず、腹筋をするように折れ曲がる個体も珍しくありません。こういった個体が超極太個体になり、特に人工蛹室に入れるべき個体になってきます。しっかりと前蛹の段階で真上を向くことは大切なのですが、ゆがんだ蛹室でも前蛹は蛹化の前は上を向きます。その代わり幼虫の皮が胴をくるりと旋回するように歪み、皮が回転しながら下方に脱げます。



上の個体のように顎がゆがむ程度であれば問題はありませんが、斜めになって脱皮をすると柔らかい頃の蛹化直後は重力に負けて左の画像のように歪みを生じるのです。


このように、翅がぴたりと胴を巻いておらず浮いた状態になっていると致命的です。羽パカとは翅が正常に伸びないということですが、その主要な理由はこのように蛹の段階から正しい形ではないことです。



そのようなエラーを引き起こさないために、このように腹筋をしているような姿勢になっても前蛹が横倒しになりにくく・・・


中々顎が抜けなくとも、このように横倒しにならないで脱皮を継続しやすいこと・・・これが人工蛹室の背面傾斜に求められるとても大切なことなのです。


蛹の顎幅が10mm付近の個体です。このような巨頭+超極太顎の個体になってくると、膨張力もとても大切になってきます。顎と頭に体液を送るのが大変なのです。膨張に要する時間も長いのです。超極太顎個体に限らず、巨頭個体が仕上がりに苦労するのは、頭部と顎に体液を流し込むことが大変だからです。当家の血統は、そういった膨張力について2015年から言及してきていますが拘って造り込みをしているため、膨張不良はあまり起きません。その代わり、膨張力が強すぎて、背面から破裂する個体が出てきています。そのくらい、膨張力は大切で、適切に膨張させないと腹がデカい蛹になり、これもまた羽化不全の原因になります。上翅に対して、あまりにも腹がデカくなってしまうからです。


幼虫が自力で作った蛹室も、頭部の方が高くなっていることが多いですね。これは、蛹が回転しやすいためにということもあるでしょうが・・・このような傾斜にしておくと、蛹の腹部が重力で圧されて、

適切に膨張できるのです。だから、自力で作らせた蛹室で蛹化させると、蛹室が左右不均等な場合は羽に問題が出ることがありますが、翅の長さが足りないことはほとんど無いのです。


これに加え、ディンプルを無くすためには蛹がよくコロコロと転がれることが大切です。細ものや小型の個体は回転に苦労をしませんが、大型個体はその重さ故、また極太顎個体や巨頭個体はそのデカすぎる上半身故に上手く回転ができません。蛹の時に真上を向いたままで硬化をすすめると、胸がバキバキに過剰形成されて上手く脱皮ができなかったり仕上がりが美しくなくなることがあります。


こういった、蛹化時の脱皮・膨張に適した背面傾斜と、蛹が内部形成をするときに転がりながら均等に内部を綺麗に形成していけるような転がりやすい背面傾斜の塩梅を揃える必要があります。だから、蛹化特化モデル・羽化特化モデルの作成は簡単なのですが、両方を揃えた内部構造の設計には苦労をしたということです。蛹に向けては、背面傾斜を急にして左右を狭くしておけばよいのです。しかし、そうすると蛹がうまく回転できなくなるし、羽化の際にも新成虫が頭を起こすまでの姿勢の安定化や踏ん張りに苦労をすることがあるのです。羽化に向けては、蛹が回転できるようにしておけばよいのですが、それは簡単すぎるので、ハイスペック個体の蛹化には通用しないのです。


現状当方の考える最適な形状は”人工蛹室TN”のそれです。これはハンドメイドだからこそできる形状であり、内部を球体のようにエグって造っているという特徴をもっています。真上から押し込んだり掘る方法では、左右の壁面の角度がまっすぐ切り立っている状態が限界です。そのような左右に球体のような掘りを有さなくとも、蛹化羽化が上手くいくような形状を設計しなければいけない。これが凸型が持つ課題でした。


【設計中の様子】

側面から見た内部構造については設計は難しくありませんでした。傾斜が蛹の背面と同じカーブを持っていればよく、蛹の回転に支障がない限界付近まで傾斜を作ってあげればよいからです。

全体のモデルについては、底面のカーブを調整したものが2023年版のYYモデルでした。そのカーブをよりシンプルにして、シンプルにした分必要な形状を浮き彫りにしていくという考えで設計を進めています(それほど手間がかからなかったのは結果論です)。


2023年羽化については、後半の100頭程度のオスは全て凸型で作った蛹室に移し替えて羽化をさせました(特殊な巨大個体を除く)。徹底的に使いまくって、調整の余地を探したということです。


蛹化や羽化に立ち会いまくりながら、内部傾斜の最適解を探っていました。多分ここで書いても十分には理解して頂けないほど、とんでもない労力がかかっています。昼夜問わず始まる蛹化&羽化に、平衡感覚を保てなくなる(天井が回転して)ほどまでは体を追い込んで刻み起きをし、立ち合いを続けました。その立ち合いの最中、「もう少しこうだったら・・・」そのたら・ればを加え微調整をしたものが24人工蛹室凸型YY-ver.です。


また、この形状は♀用にする際にはほぼ相似で良いという所感から、メス用の蛹室は24YY-ver.の単純な縮図のようなものであるとお考え下さい。メス用については、メスの蛹化羽化に立ち会わないのでオスほどのトライ&エラーができていませんが・・・GX50-Xに限ってはメスを掘っても血統能力の低下に影響がないと考え(オスの羽化力が高いままであること・F3レベルを超えてきていること)、GX50-Xは半分ほどのメスを凸型で作った蛹室で羽化させています。全く問題なく羽化してきているため、新型はさらに性能が良さそうです。



【コンセプト】

色々説明・分析するのは簡単だが、それを実行するのが難しい。

その実行を簡単にする。

こちらが完成したものです。思った通りの形状にほっと胸をなでおろしました。凸型の材料費が高いのです。プロトタイプを作るのに数千円かかるのです。押し込んで、思った形ではないと、またプロトタイプの制作を考えなければなりません。ただ、制作している方が飼育に精通しているので、前作についても今作についても打ち合わせの後、あっという間に思った形にビタっとそろってはいますが。


ここまでで申し上げてきたことが、形になっていないとお話になりません。また、緊張の瞬間が訪れます。上下左右に切断して・・・

断面の確認をします。

背面傾斜は思った通りの角度、傾き加減です。

側面についても、しっかりと左右が切り立った回転しやすい形状で、前蛹が安定しやすいやや平らな底面となっていました。



色々説明・分析するのは簡単だが、それを実行するのが難しい。

その実行を簡単にする。

そのような形状の内部構造を掘ったり作ったりすることが難しい。

それを、単純作業で量産できるようにする・・・手先の器用さではなく、力業で適切な形状を作る・・・それが人工蛹室凸型のコンセプトです。このようにガイドを乗せて、形をとります。ガイドはサービスで付けます。ブリーダーにお力添えをしたいという理念は徹底してやり切りたいと考えています。

形がとれました。

適当に掘ります。深さだけ確認して頂ければ、あとは凸型を思い切り押し込むので、綺麗にできていなくても問題ありません。

濡らします。掘ってから濡らすので、水分量の調整も簡単です。

凸型をしっかり押し込みます。

ここまで押し込みます。あとは凸型を抜けば完成です。

こちらは、凸型で作ったことを示すために枠がめり込むまで押し込んでいますが、ここまで押し込む必要はありません。深さについては考えなくてよくて、凸型を押し込めるところまで押し込めば、適切な深さまで調整できます。


こちらは前作の紹介の際に使った画像の転用ですが、このようなロゴの入ったガイドを今回もお付けします。メス用にも付きますので、ご安心ください。

※上の画像のガイドにはロゴが入っていませんが、それは試作段階の為です




【ブリーダーのお力になりたい】

用品については上記の理念で制作を進めています。性能が高い用品を作るということはもちろんですが、コスト面でもやさしいようにしていきたいと考えています。


前作はメス用では一定の利益が取れましたが、オス用は利益が1円でした。利益をとらないように設計をしましたが、クレカ決済にするとクレカ決済手数料で利益が赤字付近になることが分かりました。これに伴って、オスメス用はセット販売とさせてください。


前回は1つ¥2,480で販売をしていました。これが二つセットですので、¥4,960になりますが、メス用の利益を削り取って、送料込み¥3,900での販売を予定しています(変更になった場合はスミマセン、最後の計算チェックをしますので)

※この文面は後ほど変わります(確定に伴い)

いずれにしても、販売価格を限界まで切り詰めたいという取り組みに変わりはありません。


※お願い

上記理由につき、限界まで価格を切り詰めておりますので、支払い方法は”銀行振り込みのみ”とさせてください。ここだけはご不便をおかけしてしまいますが、何卒ご容赦ください。



文字通り身体を削って考案した設計を、どなたでも簡単に量産ができる。半永久的に使える。一度購入したら同モデルの購入は不要。以降、容器とオアシス代だけで理想形状の人工蛹室が量産できる。そして価格が低く、便利なガイドまでサービスで付いてくる。そんな形で、より多くの完品羽化を、あと一歩の仕上がりの良さを追求するブリーダーのお力になりたい・・・これを形にしたのが、24凸型YYver.の設定です。


その上で、更なる究極を求められる方に向けて、人工蛹室TNの24verは後ほど別途案内をします。

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